質疑「質問力」

次に、いくつかのテクニックのうち、新事実を提示するという手法を具体的な例で考えてみましょう。

 

このケーススタディでは、イラクに自衛隊を派遣すべきかどうか、小泉首相との仮想質疑の形式でまとめてみました。

 

 

ケーススタディ:「何故イラクに自衛隊を派遣すべきか」

 

 

ディベーター:首相は去る119日第159通常国会の施政方針演説のなかで、「国際社会の一員としての責任」を果たすためイラクに自衛隊を派遣すべと発言をされましたね。

 

小泉首相:その通り。今や日本はどのように国際社会の中で責任を果たすかという点で注目を集めている。自衛隊の派遣は大いに評価すべきである。

 

ディベーター:ではもしイラクに自衛隊を派遣しなければ、「国際社会の一員としての責任」を果たすことができないとお考えですか?

 

小泉首相:お金だけ出すというやり方ではもう責任を果たしたとはいえない。やはり他の国と同様に危険をおかしても貢献をすることを求められているのだ。

 

ディベーター:仏、独、中国など世界の大国も当然「国際社会の一員」であるにもかかわらず、イラクに派兵をしていない。首相の考え方ではこれらの国々は「国際社会の一員としての責任」を果たしてはいないことになりますね。

 

小泉首相:他の国はそれぞれ考え方がある。対応の仕方はいろいろだ。わが国ではこのように捉えているということだ。

 

ディベーター:それでは国連安保理の理事国で派兵しているのが十五カ国中五カ国にとどまっているのはご存知ですね。すると首相の言う「国際社会の一員」とは国連を軸としたものではないわけですね。

 

小泉首相:イラクのフセイン政権に対して大量破壊兵器の完全な武装解除を求めた修正決議案を国連安保理に提出したが、決議にいたらなかった。本来は国連決議に基づくのが理想であるが、今回はそのようにならなかったのは残念だ。わが国は日米安保条約を結んでおり、米国は日本にとって唯一の同盟国。その米国がイラクに安定した民主政権を作るため大きな犠牲を払って努力しているのだから、わが国がそれを支援するのは当然である。

 

ディベーター:日本の安全保障の第一に来るのは国連ではなく日米安保関係、つまり、日米関係を最優先するということですね。

 

小泉首相:国連を軽視するわけではないが、日米関係を優先することは当然じゃないか。日本の平和と安全の確保は1国ではできない。だからこそ日米安保条約を結んでいる。日本も米国にとって信頼に足る同盟国でなければならない。

 

ディベーター:日本の自衛隊派遣を受け、ブッシュ大統領は120日の演説のなかで「イラクに軍隊を派遣している国として、英国、オーストラリアに続いて3番目に日本の名前を挙げ、イラクの戦後復興作業は十分に国際化している」と主張しましたね。

 

小泉首相:実に日本の英断を十分評価してもらえたと誇りに思っている。

 

ディベーター:つまり「日本が自衛隊を派遣することで、イラクの復興が国際化した」わけですね。これは、小泉首相の言う「国際社会の一員としての責任をはたす」のではなく、「イラクの復興が国際化をするために日本が自衛隊を派遣した」ことになりますね。

 

小泉首相:。。。。。。。。

 

 

 

このケーススタディを「質問力」の3ステップに沿って解説したいと思います。

 

 

1ステップ:相手の論理を確認する

 

まず、次の2点において小泉首相からYesと言わせています。これで、小泉首相の基本的な考え方を確認できました。

 

ディベーター:首相は去る119日第159通常国会の施政方針演説のなかで、「国際社会の一員としての責任」を果たすためイラクに自衛隊を派遣すべと発言をされましたね。

 

ディベーター:ではもしイラクに自衛隊を派遣しなければ、「国際社会の一員としての責任」を果たすことができないとお考えですか?

 

 

第2ステップ:新事実などを提示して転換をはかる

 

次に、次のように「他の多くの大国はイラクに派兵をしていない」という新事実を提示しました。

 

ディベーター:仏、独、中国など世界の大国も当然「国際社会の一員」であるにもかかわらず、イラクに派兵をしていない。首相の考え方ではこれらの国々は「国際社会の一員としての責任」を果たしてはいないことになりますね。

 

ディベーター:それでは国連安保理の理事国で派兵しているのが十五カ国中五カ国にとどまっているのはご存知ですね。すると首相の言う「国際社会の一員」とは国連を軸としたものではないわけですね。

 

この新事実により、 「イラクへ派兵」が「国際社会の一員としての責任」を果たすとはいえないということが明快になりました。

 

つまり、小泉首相の基本的な考え方に矛盾があることがわかりました。

 

 

第3ステップ:相手の論理の矛盾を示す

 

最後に、小泉首相の言う「国際社会の一員としての責任をはたす」のではなく、「イラクの復興が国際化をするために日本が自衛隊を派遣した」ことになると小泉首相の論理の矛盾を指摘しています。

 

ディベーター:日本の自衛隊派遣を受け、ブッシュ大統領は120日の演説のなかで「イラクに軍隊を派遣している国として、英国、オーストラリアに続いて3番目に日本の名前を挙げ、イラクの戦後復興作業は十分に国際化している」と主張しましたね。

 

小泉首相:実に日本の英断を十分評価してもらえたと誇りに思っている。

 

ディベーター:つまり「日本が自衛隊を派遣することで、イラクの復興が国際化した」わけですね。これは、小泉首相の言う「国際社会の一員としての責任をはたす」のではなく、「イラクの復興が国際化をするために日本が自衛隊を派遣した」ことになりますね。

 

なお、「質問力」は、ディベート入門 イーブック第二巻に詳細に解説されておりますので、ご参照ください。

 

では、次は、「ディベート的問題解決へのアプローチ」を学びましょう。

 

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